注文が来ないのは、営業の問題ではないかもしれない

注文が増えない。案件の相談が来ない。営業をかけても、なかなか決まらない。こういうとき、多くの会社は営業の強化を考えます。訪問を増やす、広告を出す、値段を見直す。どれも間違いではありません。でも、それだけでは変わらないことがあります。

興味深いのは、案件が来ないと悩んでいる会社は、たいてい採用にも苦戦していることです。逆に、うまくいっている会社は、仕事も人も同時に集まっている。営業と採用、別々の活動のはずなのに、両方が連動して動いている。

この現象を、昔から人は「勢い」と呼んできました。あの会社は勢いがある。誰もが感覚的に使う言葉ですが、その正体を言葉にできる人は多くありません。正体がわからないものは、作ることもできません。だからまず、勢いとは何かを明確にするところから始めたいと思います。

勢いの正体は、「良くなっていく」という共有された予感

勢いとは、売上の伸びでも、会社の規模でもありません。「この会社はこれから良くなっていく」という予感が、社内外の人々に共有されている状態のことです。

これは国の経済と同じ構造をしています。経済学者のケインズは、経済を動かす根源的な力を「アニマルスピリッツ」と呼びました。人々の楽観や期待といった心理が、投資や消費という実際の行動を生み、経済を実際に押し上げる、という考え方です。景気とは、突き詰めれば「みんながこれから良くなると信じているかどうか」なのです。

社会学には「自己成就予言」という概念もあります。人々がある予測を信じて行動すると、その行動によって予測が現実になる、というものです。「良くなる」と信じた人は前向きに動き、その動きが実際に会社を良くしていく。

勢いとは、この好循環が回っている状態の別名です。だから勢いは、結果ではありません。未来への予感という「原因」の側にあるものです。そして予感である以上、規模がなくても、今から作ることができます。

勢いは、挑戦・前進の実感・発信の3つで作られる

では、どうすれば「良くなっていく」という予感を作れるのか。要素は3つあります。

一つ目は、挑戦があること。新しい商品、新しい売り方、新しい取り組み。大きさは問いません。現状維持ではなく、どこかへ向かおうとしている動きそのものが、予感の種になります。二つ目は、前進の実感が共有されていること。挑戦が始まっても、進んでいる感覚が本人たちになければ、予感は育ちません。小さな進捗を言葉にして、社内で共有する。先週より今週、少しでも前に進んだという事実の積み重ねが、中の人を前向きにします。人が前向きかどうかは、勢いの最も分かりやすいサインです。三つ目は、外への発信です。挑戦と前進は、外から見えて初めて「あの会社、なんか動いているな」という予感に変わります。中でどれだけ良いことが起きていても、発信がなければ、外の世界にとっては存在しないのと同じです。

挑戦が生まれ、前進が実感され、それが外に伝わる。この3つが揃ったとき、社内の空気と社外の見え方が同時に変わり始めます。

注文は、予感に引き寄せられる

考えてみれば、企業が発注先を選ぶ理由も、人が会社を選ぶ理由も、根っこは同じです。過去の実績はもちろん見られます。でも最後の決め手は、「この会社に頼んだら、良いことが起きそうだ」という予感です。クライアントは、止まっている会社より、動いている会社に仕事を任せたいと思います。挑戦している会社には新しい提案が期待でき、前向きな人たちとは仕事がしやすいからです。注文や案件は、実は予感に引き寄せられているのです。

だから、注文が来ないと感じたら、営業手法を見直す前に、問い直してみてください。自分たちは今、何に挑戦しているか。その前進を、社内で実感できているか。そしてそれは、外から見えているか。勢いは、幸運な会社に降ってくるものではありません。未来への予感を、自分たちの手で作り、共有し、発信している会社に宿るものです。小さな挑戦を一つ始めて、それを一つ発信する。勢いは、いつもそこから始まります。

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