クリエイティブへの投資は、いつ回収されるのか

デザインを刷新した。発信を始めた。ブランドづくりに投資した。それで、いつ効果が出るのか。お金を出した経営者として、この問いは当然です。投資には回収の見通しが必要で、それを問うのは経営の責任でもあります。

ただ、この問いには、先に共有しておくべき前提があります。クリエイティブへの投資は、種類によって効果が出る時間がまったく違う、ということです。この時間差を知らないまま投資すると、本当は順調に育っているのに「効果がない」と判断して、回収の直前でやめてしまうことが起きます。そして皮肉なことに、回収を焦る会社ほど、この判断ミスを起こしやすい。焦りが、育ちかけた資産を刈り取ってしまうのです。だからまず、投資と回収の時間の地図を持つことから始めたいと思います。

即効のものと、遅効のものがある

クリエイティブへの投資は、効き始める速さでおおきく二つに分けられます。

一つは、即効性のあるもの。営業資料、リーフレット、見積書のフォーマット、商談用のウェブページ。すでに接点のあるお客さんとの商談の質を上げるものは、数週間から数ヶ月で変化が見え始めます。商談の通過率、説明にかかる時間、値引き要請の頻度。ここには比較的早く表れます。

もう一つは、遅効性のもの。ブランドの世界観、継続的な発信、会社の思想を伝えるコンテンツ。これらはまだ出会っていない人の中に「知っている」「信頼できそう」という感覚を育てるもので、効き始めるまでに時間がかかります。

以前、ブランディングには少なくとも3年かかると書いたのは、この領域の話です。心理学の単純接触効果が示すとおり、信頼は繰り返しの接触からしか生まれず、繰り返しには物理的に時間が必要だからです。即効のものに遅効の期待をしても、遅効のものに即効の期待をしても、判断を誤ります。投資の前に、これはどちらの種類かを確かめること。それだけで、焦りの大半は防げます。

回収の直前が、一番「効いていない」ように見える

遅効性の投資には、もう一つ知っておくべき性質があります。成果が直線的に伸びるのではなく、あるときから一気に立ち上がることです。

発信を例にすると、最初の数ヶ月は反応がほとんどありません。でもその間、記事は蓄積され、検索に載り始め、読んだ人の中に記憶が積もっていきます。水面下では育っているのに、水面上には何も見えない。この期間が、一番苦しい。そして、多くの会社がここでやめます。

これは竹の成長に例えられることがあります。地上に何も見えない数年間、地下では根が広がり続け、あるとき一気に伸びる。やめるという判断は、たいていこの「根が広がっている最中」に下されます。つまり、投資が無駄だったのではなく、回収の直前で打ち切っている。効果がないように見える期間を、あらかじめ計画に織り込んでいるかどうか。それが、回収できる会社とできない会社の分かれ目です。

焦らないために、兆しを決めておく

とはいえ、ただ信じて待て、という話ではありません。焦りを防ぐ実務的な方法があります。投資を始めるときに、売上より手前の「兆し」を決めておくことです。

発信なら、商談で「読みました」と言われる回数。ブランドづくりなら、値引き要請の減少や、紹介の増加。採用なら、応募者が語る志望理由の変化。売上という最終成果の手前には、必ず小さな前兆があります。それを観測点として決めておけば、数字が動く前でも「育っているかどうか」を確かめられます。兆しが見えていれば、待てます。待てれば、回収まで辿り着けます。

クリエイティブへの投資は、回収できないものではありません。回収までの時間差を知らないと、途中で降りてしまうだけです。いつ効果が出るのかと問う前に、これはどの速さの投資で、どんな兆しを見ていくのか。その地図を先に描くこと。焦りは、地図がないところに生まれるのだと思います。

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数字にならない投資を削ると、数字が悪くなっていく